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-From 7-

ANOTHER WORLD


       U
「広大」「優雅」。その二つの言葉が似合いそうな見渡す限りの草原。この異世界は地球くらいの大きさであった。地平線の奥に見える空。地球とほぼ同じである。
 ほぼ、である。この世界は魔物や魔法も数多く存在している。そこが、地球との大きな違い。しかしこの大草原だ。そうやすやすと魔物も出てくれるわけではない。
 パワーボールと呼ばれる経験値の塊を大きくしようと今、努力している男がいる。黒の髪の毛、黒色の目、ごく普通の黒のトレーナーにグレーのズボンをはいた、この物語の主人公、堵妥 飛剋。俺のことだ。
「こんな大草原じゃぁ、魔物も出るに出られないよな。」
 今さっき知り合った友達。いや、仲間である奥羽 追人はそう呟いた。
「早くここから出ないと飢え死にすることない?」
 俺が言う。今の状況は俺の言葉を絶対無視することのできない、つまり俺の言葉と今の状況が完全一致しているからである。
「ここは魔物もいないみたいだな。」
 追人は気楽に言った。
「そんなこと言ってる場合かよ。まず生き延びる方法を考えないとさ。」
 俺は慌てて追人に言う。
「生き延びる?食いもんなら魔物食えばいいじゃないか。」
「その魔物がいないんじゃ、話にならないだろ!」
「じゃぁ、いる所に行けばいいじゃないか。」
「どうやってだよ!」
「こうやって。」
 追人は口に手を当てて思い切り吹いた。
「ピィィィィー」
 大きな音が辺り全体に響いた。
 するとどうだろう。辺りに風が舞い始める。そして俺たちのいる場所一帯が影に包まれた。
「なんだこりゃぁ?」
 俺は上を見て叫んだ。影の正体はドラゴンである。グレーの皮膚に大きな翼。鋭い爪や牙、そしてなんと言ってもこの赤い眼。見たものに寒気を漂わせる。怖さはあるもののこの龍には清潔感が感じられた。
「俺のペット。ギラン。」
「どうやって手下にしたんだ??」
 かなり驚いた様子で俺は聞いた。
「まぁ、敵に魔術をかけて手下にする魔法を使ったんだ。覚えたて。でもこの術は自分より強い奴には効かないらしい。」
 ゆっくり話す追人。
「じゃぁ追人こいつより強いのか?」
「まぁそうなるな。」
「げ。」
 不可思議な声をだして俺は言う。みるみる顔が青ざめるのが自分でもわかった。
「乗れ。」
 一言俺に言葉を託すと追人はドラゴンに乗った。その跳躍力は半端ではない。
「どうやって乗れって言うんだ。」
 むすっとして俺は言った。憎たらしさ満載だ。
「あ、そうか。ギラン、しゃがんでやれ。」
「うむ。仕方がない」
 ギランが口を開いた。先ほどの竜といい、この世界の竜やドラゴンは利口なようだ。
「お、おぉ。」
 口をぱっくり開けて俺は驚きの声を出した。ズズンと音を立ててギランがしゃがむ。顔はやっぱりめんどくさそうだ。
「よっと、と・・・」
 思い切り力いっぱい入れてギランに上った。
「よし。ギラン、ありがとな。」
 お礼を言って、追人はギランの頭をなでる。
「よし、ギラン進め!」
 俺が調子に乗って呟くとギランは眼を鋭くさせて、こちらを睨みつけた。
「す、すいません・・・」
 あまりの迫力に思わず謝る。うぅ、この世界ではあまり調子に乗らないほうが良さそうだ。身のためにも・・・。



著者:カクュウさん






総ページ数:8



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