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-From 1-

電車の中


 ガタンゴトン、ガタンゴトン……
「はあ〜」
 あたしはすし詰め状態の電車の中で大きなため息をついた。
 周りを見渡すとみな電車のゆれに任せ、平然とした顔をしている。
 あたしは初めてお父さんを本気で尊敬したい気持ちになった。
 あ〜もう、お願いだから早く着いて〜!!
 あたしは心の中で叫んでいた。
 ガタンゴトン、ガタンゴトン……
 そんなあたしの願いを無視するかのごとく電車は遅々として進まなかった。
 いや、別に速度が遅いわけではない。
 運転手はきっちりスピードメーターを見て定速で走っていることだろう。
 今日だけスピードを無視して走ってはもらえないだろうか。
 そう、あたしが降りる駅までノンストップで、新幹線並みのスピードで。
 頼むよ、運転手さん。
 それにしても運転手さんは朝ごはん何食べたんだろう?
 何かこんなフレーズどっかで聞いたことあるわね。
 そうそう、モーニング娘の『ザ・ピース』。
 あれはお昼ご飯だったっけ?
 早苗が石川梨華の真似うまいのよね〜。
 まあ、あの娘普段からブリブリしたとこあるし。
 またみんなとカラオケいこっと。
「ひっ……」
 あたしは危うく声をあげそうになった。
 お尻のあたりに妙な違和感を感じたのだ。
 せっかくあたしが妄想に入り込んで時間をつぶしてたっていうのに……
 あ〜もう!!ホントに早く着いて〜!!



著者:バクスイ





-To 手をつかむ-

総ページ数:2



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