足音
ただ、寂しい月の夜。
永遠の眠りについた婆やの額を、そっと撫でた。
「何者かが、きっと来ます……」
太陽から光を受けなければ、輝く事もできぬ月を見て、そう思う。
と、そんな時。足音が響いた。
少女は立ち上がり、ふいと振り返る。
そこには、黒いローブを目深にかぶった人間がいた。
「誰?」
訝しげに聞くと、人間は頭を下げて、無言で礼をする。
「ル・グラ・ドールと申します。ルーと呼んでいただいて結構」
ルーと名乗ったその人間の声は低く、男のものと思われた。
「私は、ラピス」
少女は呟き、ルーを見つめる。
ルーは頷くと、ラピスに向かって手を差し伸べた。
「私と共に参ってください」
「どこへ?」
ラピスが尋ねると、ルーは。
「月へ」
そう短く答えた……
著者:夙 凪さん
総ページ数:5