ツリー小説


-From 4-

足音


 ただ、寂しい月の夜。
 永遠の眠りについた婆やの額を、そっと撫でた。
「何者かが、きっと来ます……」
 太陽から光を受けなければ、輝く事もできぬ月を見て、そう思う。
 と、そんな時。足音が響いた。
 少女は立ち上がり、ふいと振り返る。
 そこには、黒いローブを目深にかぶった人間がいた。
「誰?」
 訝しげに聞くと、人間は頭を下げて、無言で礼をする。
「ル・グラ・ドールと申します。ルーと呼んでいただいて結構」
 ルーと名乗ったその人間の声は低く、男のものと思われた。
「私は、ラピス」
 少女は呟き、ルーを見つめる。
 ルーは頷くと、ラピスに向かって手を差し伸べた。
「私と共に参ってください」
「どこへ?」
 ラピスが尋ねると、ルーは。
「月へ」
 そう短く答えた……



著者:夙 凪さん






総ページ数:5



ツリー小説トップへ